忍者ブログ

BB-BLOG

吟詠旅譚太陽の謡、新章開始しました!&おまけ

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

吟詠旅譚太陽の謡、新章開始しました!&おまけ

えっと。
もうあまりに毎回お久しぶり過ぎて申し訳ないので、本題から。

吟詠旅譚太陽の謡、新章公開開始しました!わーい!本編の更新が何年ぶりなのか、怖すぎて計算するのを辞めましたごめんなさい!!

今回久々に吟詠旅譚の本編を進めるにあたって、今更更新なんかしたって、待っていてくださる方なんていないんじゃないの、とか、もしいたとしても、最早前章の内容なんて覚えていらっしゃらないでしょうよ、なんて思ったり、今の私が書いても、作風全然変わっちゃうんじゃないの、もうそれは旅譚じゃないんじゃないの、今の私が書いたものなんか、あのノリノリで毎週書いていた頃の私に見せたら鼻で笑われるんじゃないの、なんて、
その、とても、ネガティブ要素ばかりで何度も筆が止まったのですが、

それでもふと、今でも旅譚の紹介をして下さっている方を見つけてしまったり、
感想を下さる方がいらっしゃったり、
登場人物のイラストを下さる方がいらっしゃったり、
そして以前、自分自身が公言していた、「長かろうがつまらなかろうが完結を目指す」という言葉に後押しされたり、
そんなこんなで、帰って参りました。

アマチュアといえど、こうしてウェブで制作物を公開する限り、読者の視点はいつだって意識したいと思っているし、出来る限りのクオリティは保ちたいという思いはあるけど、
でもやっぱり、書きたい、物語として残したいという自分の気持ちを一番に考えて、ゆるゆると書いていけたらいいな、なんて思っています。

まあ書き始めたの、太陽だからね。我が家のネガティブキングの話だからね。
ネガティブな気持ちで書くくらいが丁度良いんじゃない!!って思ってます!!←←

それから、こんなに長い間放置していたにもかかわらず、旅譚を覚えていて下さった方、待っていてくださった方、そんな方には、声を大にして感謝の気持ちを伝えたいです。
本当に、ありがとうございます。
私にとっては、自分自身の何を覚えていていただくより、私のつくったものを覚えていていただけることが、好きでいていただけることが、他のどんなことより幸せなんです。
お休みしている間も、あなたの、あなた方の一言に、どんなに救われていたことかわかりません。

これからも、どうぞよろしくお願いいたします!!



この先は、ちょっとしたおまけ(?)です。
今回アップした本編を書く前に、実は全没にした書き出しがありました。
理由は、なんだかあまりに旅譚っぽくない(というか廻り火っぽい)なーと思ったからでしたが、これはこれで気に入っていたので、こんなところに載せてみたり。笑
昼の砂漠のシーンから入るか、夜の砂漠のシーンから入るかも、ちょっとした悩みどころでした。

***

 赤々とした土壁が、常に視界の端にある。
「この土壁を道標と見るか、それとも単なる障害物と見なすか、それはお前次第だがね」
 数日前にすれ違った旅人は、にこりともせずそう言った。
 じりじりと照る太陽が、旅人の身につけた白布帽子を照らしていた。からりと乾いた風が吹き、僅かに露出した彼の肌——黒くよく焼けた顔の皺に、細かな砂を吹き付ける。それでもこの旅人は、顔を顰めようとはしなかった。ただ当然のようにそこに立ち、乾いた風を、細かな砂を、更には照りつける赤々とした太陽の熱を、彼は一身に受け入れていた。
 そうしてすれ違いざまに、いつまでも代わり映えのしない風景に辟易としていたラトに向かって、まるで心を見透かしたかのように、男はそう語ってみせた。その日のことは、今でもしかと思い出せる。それなのに、彼と出会ったのが一体何日前のことであったか、それがラトには曖昧であった。
 土の乾いた岩石砂漠に覆われた、延々と続く旅の道。向かうアバンシリの町へは、あと何日ほどで着くのだろう。くしゃりと畳んだ地図を取り出し、ちらと視線を落とすと、ラトは心の中だけで、小さく深い溜息を吐いた。
 何度陽が昇り、また西の地平へ落ちたのか、数えたメモが見えていた。縦に四本、横へ一本。その塊が四つと、その他に縦線が三本引かれている。——陽が昇り、また落ちての繰り返しが二十三回。一つ前に立ち寄った町を出て、既にそれだけの日が過ぎている。
 地図ではそれ程遠い町とは思われなかったのだが、ごつごつとした岩の転がるこの砂漠に点在する土壁が、ラト達の旅路を邪魔していた。ラトの身長の三倍はあろう土壁を避けて進むとなると、自然と道が曲がりくねり、なかなか目的の町への道を歩めないのである。
「この土壁を道標と見るか、それとも単なる障害物と見なすか、それはお前次第だがね」
 名も知らぬあの旅人は、ラトに向かってこう続けた。
「お前がどう思おうが、この土壁は私の祖父の、そのまた祖父が生まれたばかりの子供であったのより遙か昔から、ずうっとこの場所に存在している。時には人々に道を示しながら、時には人々の道に立ちはだかりながら」
 当たり前のことを、随分、遠回しに言うものだ。しかしラトは頷くと、そう語った年配の旅人に深く頭を下げた。旅の道を進む者は、先行して道を往き、それを識る者に対して最上の礼儀を払うべきであると、事前に言い含められていたからだ。
 ラトにそう教えたのは、彼のすぐ前を歩くキリであった。
「お前は最近、気づけば太陽の位置ばかり確認してるな。余程退屈なのか?」
 ふと振り返ったキリが、にやにや笑って振り返る。ラトが「そんなことはない」と顔をしかめて応えれば、彼は「そうかい」と軽く言葉を返してから、先の日陰を指してこう言った。
「この辺りで休もう。時期に陽が翳る。夜を明かす準備をしないとな」
「わかった。……、ここしばらく泉もないし、覇王樹もあまり見なかったけど、水はもつかな?」
 ラトが腰に下げた水袋に手を伸ばせば、隣を歩く金色の目の狼が、ちらと彼を仰ぎ見た。「足りないの?」と問うかのようなその瞳が、獰猛な獣らしからぬ、不安げな色に翳っている。
「聞いた話じゃ、そろそろ覇王樹の群生地があるはずだ。そこで水を摂ろう。泉の水ほど美味くはないけどな。どれくらい残ってる?」
「節約すれば、明日の夜までは足りると思う」
「なら、十分さ。野営の準備をしよう。この辺りには蠍が出ると聞いているから、ハティア、匂いがしたら教えてくれよ。……まあついでに、狩ってくれりゃあ楽なんだけどな」
 ハティアがぴくりと耳を立て、恥じらうようにラトの背後に隠れてしまう。森を出てからここしばらく、狩りに失敗してばかりいることをキリが事あるごとにからかうものだから、彼女も気にしているのだろう。「キリ」と名を呼び、ラトが睨めば、相手はにやりと笑ってみせた。

コメント

PR